キメラアント編はあらゆる作品の中でも屈指の名テーマだと思っています。
人類と言葉を交えることが出来る、怪物がキメラアントであり、彼らはアリの本能を持ちながらも人の心を理解することが出来ます。
上級の存在である護衛軍はより繊細な心を持っており、生きていく内に人というものの本質に触れていき、心が変化していく過程があります。
その中にドラマがあります。
アリという人とは違った価値観がある存在だからこそ、そこから見える世界は実に客観性があります。
キメラアントという生物を通して
人間とは、どんな生物なのか
これを読者に問いかけてくる、いい意味で少年誌らしくない、哲学的な話であると思います。
バトル漫画としてのキメラアント
しかしながら、バトル漫画としても実に良く描かれています。
キメラアント編が面白いのは、
得体のしれない化け物が出てくるから
だと思います。
それぞれが圧倒的な能力を生まれた時から有しており、ピトーは
凡夫って大変だな
うん、ちょっと僕強いかも
などの言葉を作中では放っています。
めちゃくちゃ強いのは当たり前なのですが、彼らにとって人間とは捕食対象でしかなく、人を殺める方法が今までのバトル漫画とはまた違った「エグみ」があります。
その「気持ち悪さ」が良い方向に作用して、読者が世界に引き込まれていくわけです。
富樫先生がこの話を生きているうちに書いてくれたことが、漫画業界における一つの功績だと思っています。
キメラアント、王直属護衛軍とは
その名の通り、王を守るために生まれた兵隊アリです。
キメラアントは、女王が生んだ王はすぐさま護衛軍と一緒に巣立ちする
という生態を持っています。
そのため、王は直属護衛軍を率いて旅立ち、自分たちの住処を探す旅に出たのです。
護衛軍はそれぞれ、
ネフェルピトー、シャウアプフ、モントゥトゥユピー
と名乗り、それぞれが怪物的なポテンシャルを秘めています。
ピトー
生まれた時からステージが違う
と言わしめるほどの怪物です。
全ての能力がケタ違いに強く、とりわけ恐ろしいのが円の広さであり、いびつな形をした円は最長2キロ先の獲物を捕らえることが出来ます。
達人ならば、50メートルの円を使える
とされる世界で、2キロという距離は文字通り「人間離れ」していると言えます。
また、その円の広さと抜群の相性を持っているのが身体能力です。
はるか遠くに離れた敵にたいして、一瞬で距離を詰めるバネはテリトリーに入る侵入者を逃しません。
くわえて、残虐性を持ち、
ヒソカやイルミよりもまがまがしいオーラを持つ
とされています。
絶の状態でオーラに触れた場合、立ち直れないほどのトラウマを発症し、前線を退かなければならないほどです。
プフ
王に対して絶対的な忠誠を誓うのが、プフです。
その役割は参謀と言えます。
高い知能を持ち、合理的に物事を捉えます。それだけでなく人の心につけこむ「ずる賢さ」も持ち合わせています。
能力で言えば、ピトー、ユピーと比べても恐ろしさはなく、外敵を殺傷する力はそこまで高くありません。
しかし、利便性で言えば、群を抜いて高いです。
仮に王が人間の世界を征服していた場合、その管理のほとんどはこのプフが行い、高い生産性をもってキメラアントは発展して行ったことでしょう。
ユピー
怪物的なオーラ量を持っており、文字通り、桁が違う怪物です。
オーラの量ですべてが決まることはない
というのが、この世界の定説ですが、ユピーほどの怪物の前ではそれすら根底から覆されます。
護衛軍の中では最も戦いに特化した怪物とされ、それゆえに単細胞的な部分が目立ちます。
しかし、念を駆使した戦いを経て、敵の戦略に感動したり、念の奥の深さに対して面白さを感じたりと。
高い吸収性と物事を深く考える洞察力は持ち合わせています。
流石は選ばれた戦士というだけあって、王を支えるものとして、悪くない知能も授けられた。と考えるのが打倒でしょうか。
護衛軍の中では、もっとも人間に近づいたアリといっても良く、合理的というよりか、人道的な賢さを持ったアリです。
直属護衛軍まとめ
作中で出てきたキメラアントの場合、全部で上記3体のアリが存在しており、それぞれが役割を持っています。
漫画を平たく読んでいる人ならば、
ただの超強いありんこだろ
と感想を抱くかもしれません。
しかし、細かく読んでみるとしっかりと王をサポートするために、理想的な配役があたえられていることが分かります。
ピトー→遠くの敵を迎撃するために、円が広い
ユピー→王を守るために戦闘力が高い
プフ→王を補佐するために高い頭脳を持つ。
それぞれが違う分野に秀でていることで、完璧な王の牙城がより強固になります。
王直属護衛軍の強さについて
作中で出てきた護衛軍ですが、その強さはどの程度の物なのか。
参考程度にすればキルアは
ヒソカや兄貴よりもまがまがしいオーラを放っていた
と語ります。
あくまでもオーラの性質なので、強さで言えば基準になるかわかりません。
しかし、危険性はなんとなく理解できます。
決定的なのはネテロ会長の
あいつ、わしより強くねー?
というセリフでしょうか。
ネテロは作中でも、最強の念能力者です。
そのネテロが、自分よりも強いと言っているのですから、とんでもない化け物です。
しかし、ネテロと戦えば、完封されると思われる。
もっともこのセリフは「単純な強さ」を指したセリフだと思われます。
どれだけ総合力が格上でも百式観音をピトーは攻略できないので、ガチで戦えばネテロが無傷で勝つでしょう。
その他の護衛軍にしても同じです。
ユピーはキルアの攻撃を見きれずに一方的に殴られていたし、プフは戦い向きではありません。
ですから百式観音の前に、敗れるだろう、と考えられます。
そのため、強さの位置としては
王>>越えられない壁>>ネテロ>>護衛軍
こういった形になってくるかと思います。
メルエムは百式観音を攻略する知性と、防御力があります。
しかし、護衛軍は知性、装工、ともにそれを下回ると考えられます。
そうすると、ネテロが格上といった力関係になってくるかと思います。
旅団と護衛軍はどっち
それでは、幻影旅団と護衛軍はどっちが勝つのでしょうか。
恐らく、護衛軍の圧勝でしょう
ネテロが護衛軍に勝てるのは、百式観音という無敵の能力があるからです。
その他の能力は、護衛軍にぼろ負けしています。
というか、
「普通の人間があんな怪物に勝てるわけない」
と考えるのが普通です。それはユピーとの戦いを見ればわかります。
フェイタンの痛みを攻撃力の還元する念能力がありますが、恐らくダメージを蓄積する前にやられてしまうのではないかと思います。
団長ならば、あるいは
唯一良い勝負をしそうなのが団長でしょうか。
団長はスキルハンターで戦略の幅が非常に広いです。
作中で出てきた能力でも、ファンファンクロスがあります。
これで包んでしまえばどれだけの強者でも、命を手中に収めることが出来ます。
ピトーのようにすばしっこい相手ならば、難しいです。
しかし、ユピーのような相手の攻撃を受けきって、圧倒する相手ならば倒すことが出来るでしょう。
また、プフが相手ならば普通の正面戦闘で押し切ってしまえそうな気がします。
なので強さの関係で言えば
護衛軍≧団長>>旅団
こういった関係性になるのではないかと思います。
旅団が頑張ってもキツイ
旅団は世界で最も恐れられている盗賊ですが、基本的に人間を相手にしてきており、今までの常識が通用しない相手であれば、歯が立たないでしょう。
実際に師団長クラスにもそれなりに苦戦をしていました。
そうなると、それの3周りほど強いと推測される護衛軍を倒すのなんて、ムリゲー過ぎることが分かります。
まとめ。
ということで、王直属護衛軍について考えていきました。
作中でも明言されていたのですが、
人間の成分が入ったせいで、統率力が損なわれた
というのは、アリにとって大きな誤算だったと思われます。
アリという生物がなぜ強いのかと言えば、無機質的に物事を考えるからです。
僕たちが日ごろから見ているアリという生物の強さは統率にあります。
なぜあれほど統率が取れているのかと言えば、思考に血が通っていないからです。
自然界で生き残るためにアリは遺伝子に刻み込まれた情報を頼りに動きます。
エサはエサ。敵は敵。
最終的に群れさえ生き残れば、体が欠損し、最悪死んでしまってもOKなのです。
言ってしまえば、機械みたいなものです。
あらかじめ決められたプログラミングに従って、やるべきことを恒久的にこなしていくのみなのです。
そしてそれが、アリという種族の最強の武器だと言えます。
しかし、キメラアントはどうでしょう。
人が入ったせいで人に対して感情を持ち、それなりに頭が良い兵士は哲学や価値観も芽生えてしまいました。
やり方にこだわりを持ち、自分の土俵で戦うことにやりがいを感じる兵士も出てきました。
アリの最強の強みである、統率がなくなったわけです。
結局のところ、そこを突かれたが故にキメラアントは強みを発揮できずに、各個で撃破されてしまいました。
しかしながら
人間を食らったおかげで、念能力に目覚めたアリも出てきました。
人間と同等の知性を持ちながら、硬い皮膚を持つ
そのおかげであれほどの大惨事となったわけです。
知性を持たないアリであれば、攻略は楽勝だったでしょう。
拳銃で撃たれて死に至るアリも居て、武装した集団でもなんとか勝てるぐらいの強さだったのですから、それは間違いないでしょう。
そう考えると、やはり人間を捕食したことが一番の厄介ごとだったと考えるのが打倒でしょうか。
結論、キメラアント編は漫画の歴史に残る大作
この記事は思い立ったことをパッと書いただけなのですが、それでも、これだけの考察を展開できます。
掘り下げればもっと話を展開することが出来ると思います。
そう考えると、キメラアント編は実に良く出来た対策だと感じますし、いまだに読み返してみると、発見があったりします。
個人的には漫画史に残る大作
だと思っています。
それを踏まえて、今回、護衛軍について書いたのですが、楽しんで読んで頂ければ幸いです。
コメント