進撃の巨人の主人公であるエレン・イェーガーですが、他作品の主人公とひと味違った毛色であると言えます。
自らの使命のために突き進み続け、他人の命さえも躊躇なく奪うことが出来るその思考はおおよそ少年漫画の主人公とは言えないでしょう。
(驚きなのは、アニメがNHKで放映されているということです)
その狂気ぶりはある意味で魅力的に映りカリスマ的な人気を誇っていると言えます。そんなエレンの正体について、今回は深堀していきたいと思っています。
良ければ、進撃の巨人という作品を掘り下げるうえで当サイトを活用していただければと思います。
エレン・イェーガーという主人公について
エレン・イェーガーという人物は大きく分けて
幼年期、少年期、青年期
に分けることが出来ます。
進撃の巨人は巨人の継承というものがあります。
9つの知性巨人を継承した人間は、先代の継承者の記憶を覗き見ることが出来るのです。
それによって、思考が著しく犯されていくケースも多いです。
エレンもまた、
その被害者である。
と言えるでしょう。
進撃の巨人のみならず、始祖の巨人や戦槌の巨人といった歴史ある巨人を継承していくにつれて、その思考はどんどん危険なものへと突きぬけていきました。
ともかくの前提として、それぞれの年代においてエレンがどういった人物だったのかを掘り下げていこうと思います。そうすれば、その「染まり具合」もなんとなくわかるはずです。
幼年期(10歳)
作中序盤で登場した幼年期エレンです。
この時から、自由に対しての渇望は非常に大きく壁内にとらわれている人類に対し、大きな不満を抱いていました。
この時は巨人に対してそこまで大きな憎悪は抱いていませんでしたが、それでも自由を追い求める調査兵団というものに大きな憧れを抱いています。
これには友人であったアルミンの影響も大きく、アルミンは壁の外に何があるのか。事細かくエレンに力説していたのです。
そういったこともあり、調査兵団がいかに危ない存在であるかを日々説かれていたのにも関わらず、その思いは強くなっていきます。
小さいころから危ない奴だった?
こうして書けば、かなり危なっかしい一面があるように思われます。
まさしくその通りで、当時幼かったにもかかわらず人さらいを2人殺めています。
自分の理想を通すために、それを邪魔する人間を躊躇なく仕留めにかかることが出来る。
この時から進撃の継承者としての適性は最高であったと言えます。
ただ、忘れてはいけないことがあります。
それは、
そもそもこの行動はミカサを助けるためにした。
ということです。
行動自体は悪魔的ですが、守ることが出来る人間に対しては優しい一面を持ちます。その後はミカサに赤いマフラーをプレゼントし、首に巻いてあげるという天然モテ男ムーブを見せます。
これをなんの打算もなく出来るのですから、エレンの本質は性善的であると考えるのが打倒です。とはいっても、偏り過ぎているからこそ危険であり。
そのやさしさが今後のエレンの人生を葛藤に満ち溢れた物にしていきます。
845年。シガンシナ区に巨人が侵入してくる
超大型巨人によって壁の扉が破壊されます。
それによって、巨人が進行。
同時に最愛の母親が巨人に捕食されます。しかも、その一部始終を見ています。
幼いながら、地獄を見たエレンは巨人に対して強い思いを抱き
この世から一匹残らず、駆逐してやる
と誓う様になります。
グリシャから巨人の力を受け継ぐ。
壁が蹴破られた同じ日に、グリシャはレイス家の礼拝堂に侵入しそこで、始祖の巨人を食いちぎり自らの手中に収めます。
その後、エレンに対して継承を行い、始祖、進撃の継承に成功します。
幼少期すでにエレンは巨人の力の獲得が済んでいました。その力が解放されるのは5年後になります。
エレン少年期(15歳)
エレンの少年期時代は非常に長いので、いくらか話を分けていこうと思います。
訓練兵~進撃の巨人に目覚める
巨人の侵攻から5年。エレンは訓練兵を卒業しました。これといった優れた能力はない物の、並々ならぬ努力で平均以上の点数を取り、訓練兵の中でも5位の成績になります。
(一応格闘術に優れていた)
成績優秀な兵士は憲兵団に入ることが多い中でエレンは調査兵団を志願して、卒業。
巨人を駆逐することに対して大きな希望を抱いていました。
それもつかの間。5年の時を挟んで超大型巨人がトロスト区扉前に出現、シガンシナ区と同様に壁を蹴破りそれによって多くの巨人がトロスト区を蹂躙します。
戦闘前は自信にあふれていた新兵たちでしたが、巨人の圧倒的な力の前に次々と捕食されていきます。
その中でエレンも全く歯が立たず、捕食されました。
巨人の力に目覚める
この時に、巨人の胃袋の中で巨人の力に目覚めます。この時に覚醒したのが、「進撃の巨人」です。
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進撃の巨人は圧倒的な力を持ち、エレンの意志そのままに巨人を蹴散らしていきます。活躍によって穴が開いたトロスト区の扉を大岩でふさぐことに成功します。
その後、危険人物として壁内人類の裁判にかけられるも、リヴァイアッカーマンが放った
「この巨人が暴れ出したときに、仕留められるのは俺しかいないだろ。」
という旨の言葉によって死刑を免れることに成功します。以降はリヴァイ班に迎え入れられ、活動するようになります。
自身の価値と引き換えに多くの仲間が倒れていく。
巨人化出来るエレンの価値は、壁内人類において大きなものであると言えました。
100年の間巨人に支配されてきた人類にとって唯一の解決の手がかりであるいえ、それゆえに、エレンは破格の好待遇を受けます。
しかしながら人類には障害があり、特に大きな損害となるのは、壁内人類に紛れていた、アニ、ベルトルト、ライナーでした。
彼らは優秀な兵士に装った、敵国の戦士であり任務を受けて壁内で活動していました。
手始めにアニがエレンを奪い取ろうとしますが、失敗します。
その後、ライナー、ベルトルトがそれぞれ巨人化しエレンを強引に連れていこうとしますが、これも失敗します。
しかし、多くの人間が犠牲となり、最終的には調査兵団のほとんどが肉片や焦土とともになくなりました。
エレンとヒストリアの接触
偽りの王を謳っていた壁内人類は、クーデターによって打倒されます。
それによって、真の王家の末裔であるヒストリアが王位を継承し壁の中の王として君臨することになります。
戴冠式にて、エレンは始祖の力を発現し、一時期座標に立たされることになります。これはエレンが宿す始祖の巨人の力と、ヒストリアの体に流れる王家の血が反応したことによっておこったものです。
作中でも解説されていますが、始祖の力は王家の血がなければ機能しないわけです。
ここでエレンは道を通じてあらゆる未来を理解することになります。
その後4年間、絶望的な未来について一人で悩み続けることになるのです。
ここがエレン・イェーガーが悲劇のヒーローと言われる最も大きな要因であると言えます。
少年期まとめ
訓練兵として命がけで戦い続けた少年期はただ愚直に進み続けたと言っても良いでしょう。
しかし、ヒストリアとの接触をきっかけにエレン自身の運命は大きく変わっていくことになります。
ウォールマリアを奪還したのち、エレンたちは巨人の力を駆使し、壁外にいる無垢の巨人を全て討伐します。
それによって生まれて初めて、海があることを知り、真の敵は巨人ではなく海の向こう側にいることを理解します。
この時すでにエレンは、自身の運命を受け入れ始めているところです。その運命とは
地ならしを使って、壁外人類すべてを跡形もなく踏み鳴らす
というものです。これは、多くの人間の命が奪われる狂気の作戦です。
勿論エレンもこの未来に対して全力で抗います。しかしながら、進撃の巨人で見た未来はどうあがいても不変であることを知り、その中で焦っていきます。
青年期のエレンはどういった世界を見ていたのでしょうか。
青年期のエレン(19歳)
マーレの戦士を退けてから4年が経ちました。そこからエレンを初めとするパラディ島勢力は壁外人類に対抗する手段を画策します。
地ならしを起こさなくても、壁外の人類と分かり合えることが出来れば犠牲者は少なくても済む。それがエレンにとって、最も望まれた結末といえたのです。
また、パラディ島勢力がマーレを初めとする壁外人類と分かり合える手掛かりというものが、実際にあったのです。
その手がかりが義勇兵の存在です。
マーレ義勇兵を乗せた船がパラディ島に漂着する。
マーレ兵を乗せた軍艦がパラディ島に漂着します。その中には義勇兵と呼ばれる「パラディ島勢力に加担する兵士」がいました。
彼らは反マーレ戦力として、パラディ島に対して多くの恩恵をもたらす兵士たちです。
そのマーレ兵の仲介により、パラディ島の人間が世界中の文化に触れてみて、歩み寄ろうと言う計画が成されようとしていたのでした。
未開の地の文化に触れるパラディ島勢力
実際にマーレの土地に足を踏み込んでみたパラディ島の勢力は初めてみるものに目を奪われたり、
実際に街で生きている人を見て
ここにいるのは
「同じ人間なんだ。」
ということを実感しました。それによって、エレンを初めパラディ島の人間は
「歩み寄ることも出来るのではないか。」
と淡い希望を抱き始めます。
実際に自分たちに共謀している、義勇兵たちともこれほどまでに仲良く出来ているわけなのだから、それは難しくないのではないかと。
エレンが地ならしを起こすきっかけ。
そういった中で、国際討論の場での、「ユミルの民保護団体」の壇上での話を聴く機会が出来ました。
「意向次第では、和平を表明してみる」
そういった期待をもって、その場に参加したのです。
結果は、期待を大きく裏切るものでした。
エルディア人を擁護する立場の人間は
世界各国で差別されているエルディア人を擁護することが出来ても、その元凶であるパラディ島の悪魔たちは始末するべきだ。
と宣言します。
その言葉に対して、国際討論会は拍手喝采。参加していたパラディ島一同は肩を落とします。
その後エレンは、最期の希望を裏切られミカサやアルミンたちの前から姿を消し去ります。
この時点でもはや選択肢は世界中を敵に回して、地ならしを起こすこと以外にはなくなったわけです。
その後、負傷兵としてマーレに潜伏する
現状に対して絶望したエレンは負傷兵としてマーレに内部に潜伏し、その場に居合わせたファルコ少年兵を使って手紙のやり取りを行います。
この際エレンは、自らの目と足を自傷しており、巨人の力をうまく利用していると言えます。
レベリオ収容区で宣戦布告を行う
タイバー家が世界各国と手を組んで、パラディ島に対して宣戦布告を行ったタイミングを見計らってエレンも宣戦布告を行います。
レベリオ収容区内にて行われた戦いはパラディ島がマーレ軍に大打撃を与え、さらにその場に居合わせた戦槌の巨人も吸収します。
その結果エレンの地ならしの準備は完全に整ったと言えます。
ジーク(王家の巨人)と接触し地ならしを発動する
妨害がありながらも、ジークと接触して地ならしを発動。それによって、壁外人類を駆逐することに決めます。
これはエレンにとっても苦渋の決断でした。
壁外調査で、壁の外にいる人間も自分たちと同じ人間であると知っていました。
何も罪のない人間に対して、一方的な大虐殺を行うことは人一倍優しいエレンにとってこの上なく悩ましい決断だったと言えます。
しかし、島にいる仲間とその他大勢の人類を天秤にかけた時、エレンにとっては一緒に時を過ごした仲間の方がずっと大事だったのです。
だからこそ、地ならしを行い、自らが世界の敵となることを決意したのです。
ミカサによってとどめを刺される
そして、地ならしによって多くの人類を葬り去った後。ミカサによって首を落とされて、絶命します。
結局エレンは、人さらいを抹殺したとき。そして地ならしを起こし、前代未聞の虐殺を行った時まで
自分の大切な人を守るために居ても立っても居られない性分だったのでしょう。
これは、ただ強力な力を持ってしまった不器用で優しい少年の物語だったのです。
最終的に多くの人を葬り歴史の大悪党として名前を刻んだエレンですが、ことの真意を知っている同期の兵士にだけは、その雄姿を見届けてもらい、役目を果たし安らかに眠りました。
これは、これでハッピーエンドではないかと思われます。
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