鬼の最強格が上弦。
上弦の中でも最強なのが、上弦の壱。
黒死牟である。
あらゆる敵に対応できる技のレパートリーの豊富さと、状況判断力。それに加えて、身体能力。
まとっている威圧感は他の鬼の比ではないことが作中で描写されている。
その正体は、月の呼吸と呼ばれる独自の呼吸を極めた剣士だった。
今回は、そんな黒死牟の生き様について振り返ってみるとする。
黒死牟とは。
無惨の血を多く与えられた鬼である。
物語の舞台である大正時代よりもはるかに昔、戦国時代より悠久の時を生きつづけた鬼。
元来が持つ剣術の才能。磨いた技。加えて、鬼が持つ身体能力と再生能力を持っている。
攻守ともに至高の領域に踏み込んだ最強の鬼は、長い時間十二鬼月の頂点として君臨する。
とはいえ、元来は誇り高い剣士だった。
名は厳勝(みちかつ)といい、武家の生まれで幼いころから剣術に打ち込んできた。
稽古をすればするほどに、力を身に着けた
と作中では描かれており、類まれなる才能を持っていたことは間違いない。
しかし、特殊な境遇により、自ら鬼となる道を選んだ。
具体的な理由について語ると以下の通り。
- 痣者のリスクに気付いたため
- 無惨も呼吸を使える剣士を配下にしたかった
- 弟を超えたかった
痣者のリスクに気付いたため。
呼吸の剣士は技を極めると、「痣」が発現する。
痣が発現すると、圧倒的な身体能力が手に入る。
柱クラスの使い手になると、上弦の短期討伐も不可能ではなくなる。
しかし、ノーリスクで使いこなせるものではなく、痣が発現したものは例外なく25までにその生涯を閉じるとされている。
自身の寿命と剣技が途絶えることを恐れた剣士、厳勝は鬼として生きていく道を選んだ。
無惨も呼吸を使える剣士を味方につけたかった。
無惨自身も優秀な部下が欲しかった。
そこで、自身の寿命について悩んでいる厳勝に持ちかけて、鬼化への道を作り出した。
弟を超えたかった
黒死牟(厳勝)には弟がいる。
縁壱といい、この弟が規格外なほどに強かった。
剣士として厳しい鍛錬を積んだ厳勝でも、足元にも及ばない実力者であった。
その実力は鬼の祖である無惨さえも一瞬で切り伏せてしまうほどに強く、
無惨曰く
「あれは、この世の理の外にいる」
「真の化け物は私ではなく、あの剣士だ」
とのこと。
そんな弟に常に嫉妬していた中で、鬼舞辻無惨と出会ってしまった。
すぐそこに迫る寿命、弟の存在、強くなることへの渇望。
厳勝が鬼化するには条件が揃い過ぎていたと言えるだろう。
厳勝、黒死牟の生き様はカッコいいのか。
黒死牟の生き様を順を追って解説していこうと思う。
どういったいきさつで、縁壱に嫉妬して、鬼に変貌してしまったのか。
作中において、キーともいえる縁壱の周辺関係を知る上で厳勝の存在は避けて通れない。
鬼滅の刃をよりもっと知りたい人に向けて、厳勝、黒死牟の生き様について解説していこうと思う。
武家の家に生まれる。
何不自由な暮らせる武家の家に生まれる。
その際に双子の弟である縁壱も生まれる。
しかし、
双子は跡目争いの原因となること加えて、縁壱の顔には痣があったこと。
それらの理由によって、父親は縁壱を処刑しようとする。
しかし、怒り狂った母親によって止めれられて、縁壱は生き永らえる。
ただ、厳勝は何不自由なく食べ物、着物が与えられるのに比べ、縁壱は何一つ与えられなかった。
それを不憫に思った厳勝は縁壱のことを気にかけるようになり、たびたび世話をするようになる。
縁壱の才覚に気づく
そういった中、厳勝は剣の道に邁進するようになる。
日々が稽古漬けで、才能が認められていた厳勝は努力すればするほど力を身に着けていった。
そんな中で、縁壱が厳勝のように剣を振りたいと願う様になった。
試しに剣を握らせてみると、厳勝がどれほど頑張っても一本を取れなかった父の配下からいともたやすく連撃を浴びせた。
そこで、初めて厳勝は悟った
「恵まれていたのは自分ではなかった」
それに加えて、縁壱は剣の道に全く関心がなかった。
剣の話よりも、兄上とすごろくや凧揚げがしたい。
縁壱と分かれる。
圧倒的な剣技が配下に知られてしまったことから、自身が跡目にされることを悟った縁壱は自ら武家を去ることになる。
厳勝は強烈な嫉妬心を抱いていたが、当の本人が目の前からいなくなった。
ある程度すると、縁壱の存在を忘れてしまったようだった。
しばらく平穏な日々を過ごす
ある程度年月が流れると、妻をめとり子供も生まれた。
平凡な日々を送り、やや退屈な面持ち日々を過ごすようになる。
臨まぬ会合を果たす
ある程度、平凡で穏やかな時間を過ごしていた矢先、臨まない会合を果たすことになる。
野営した際に現れた鬼に襲われる中、鬼狩りとして活動していた縁壱と再び顔を合わせる。
圧倒的な剣技を見た厳勝は嫉妬心を燃やしつつ、その技術と極意を盗むべく自身も鬼狩りに入ることを志願する。
鬼狩りとして力を伸ばし、痣を発現
そういった中、縁壱の指導力も相まって鬼狩りの集団は自身の剣技に合わせた「呼吸」を習得する。
厳勝もそれに順じて呼吸を習得するも、始まりの呼吸である「日の呼吸」は身に着けることが出来なかった。
代わりに身についたのは派生形である、「月の呼吸」。
技を伸ばし続けていると、まもなく「痣」が発現するようになる。
やっとの思いで、痣を発現するも先が短いことを悟る
痣を発現し、能力を伸ばしていけば縁壱に勝てるかもしれない。
希望が見えた矢先、痣を発現するものがバタバタと倒れ始めた。
倒れていく仲間たちを見て自身も先が短いことを悟る。
無惨に鬼化を持ちかけられる
そういった中で、無惨に鬼化を持ちかけられ焦がれていたものを手に入れることが出来る。
これによって、上弦の鬼である黒死牟が生まれる。
(いきなり上弦の壱を任せられていたのかは不明。)
置いた縁壱と出会い、格の違いを見せつけられる
鬼として圧倒的な実力を手に入れ数十年、縁壱と出会う。
縁壱は今にもこと切れそうなほど、衰えていた。
老体でなお、鬼になった兄に嘆き、涙を流す縁壱。
そんな、縁壱に切りかかろうとする厳勝だった。
しかし、一騎打ちをするも、寸でのところで切り落とされるところだった。
鬼になっても、縁壱が年老いてもなお、まだまだ縁壱の方が強かった。
結果的に衰弱死した縁壱は勝ち逃げ。
厳勝にとって一度も勝てなかったものとして、心に残り続けることとなった。
そして、300年以上「上弦の鬼」として生き続ける
戦国の世が過ぎてなお、厳勝は生き続けることとなる。
縁壱がいない世界において、圧倒的な「月の呼吸」は無敵だったのだろう。
上弦の壱として、無惨の最強の手下として君臨し続けていた。
しかし、結局何も得ることが出来なかった
ただ、最強を求めて戦い続けるも、最終的に鬼殺隊に仕留められるまで何も得ることがなかった。
と本人は自己の人生を振り返っている。
家を捨て、妻子を捨て、子孫を切り捨てて、人間であることを捨て、侍であることも捨てたというのに。
ここまでしても、ダメなのか。
こういった旨のことを語っている。
非常にカッコいい黒死牟だが、その生き様は悲劇そのもの。
その見た目と扱っている技、強者としての立ち振る舞い。
魅力的かつ「カッコいい敵」として君臨し続けていたのが、黒死牟。
しかし、その生き様は
「悲劇そのもの。」
といっても良い。
剣術の才能に恵まれながら、自身の才能などが霞むほどの天才が生まれた時から傍にいた。
一度は忘れかけたモノの、忘れたころにまた現れる優秀すぎる弟。
仮に大天才である縁壱がいなければ、厳勝はもっと素晴らしい人生を謳歌していたのではないだろうか。
鬼として頂点に近い実力を身に着けながらも、絶対に超えたかった存在には全く敵わず、最終的には勝ち逃げされた。
しかし、実際にそういったことは良くある話。
黒死牟という鬼滅の刃のキャラクターを用いたが、こういった話は現実でもよくあること。
プロ野球なんかでは、大谷翔平を見ると多くの選手は
自分は天才ではない
ということを自覚する。
同チームでプレイしてた中田翔選手は
練習をしているのがばかばかしくなる
とまで、その才能に圧倒的な引け目を感じているメディアでは語られていた。
プロ野球の世界でない、どんな世界においても凡人では一生追いつくことが出来ない世界に君臨する超天才というものはいるのかもしれない。
黒死牟が不運だったことは、天才であったこと。
最後になるが、
黒死牟(厳勝)最大の不運は天才であったこと。
ここになるだろう。
稽古をすればするほどに、力を身に着けた
と、作中では語られている。
それに加えて、柱がまとめてかかっても傷一つつけられない圧倒的な剣技を持っている。
また、無惨にその実力を認められているのが何よりの証拠。
厳勝は天才である。
だからこそ、努力すれば届きそうな位置にいる弟に対して嫉妬心を抱いてしまったのである。
例えば、何の才能もなかったなら、早々に諦めも付く。しかし、作中でも書いてあったように
鍛錬をすれば、その分だけ腕を磨くことが出来た。
だから、どれだけ腕を磨いても追いつけない超天才の弟に対して、劣等感をもって生き続けなければならなかった。
こうしてみると、ストイックではありながら儚い生き方であるといえるだろう。
作中において、悲劇の最後を遂げる鬼は多数いる。その中でも、別のベクトルで悲しい結末を迎えた鬼と言えるのではないだろうか。
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