鋼の錬金術師という作品で欠かせない悪役がいるとすればそれはホムンクルスではないでしょうか。
七つの大罪をモチーフに描かれており、それぞれ姿かたちが違うものとなっています。
身体能力が高く、殺しても再生する能力があります。もちろん無限に再生できるわけでなく、ある程度ストックが尽きると息絶えてしまいます。
とはいっても、その能力はあまりに強力であり、一人を倒すだけでも非常に骨の折れる作業であることは間違いないでしょう。
また、それぞれ持っているポリシーのようなものがあり、その生き様は作品における見どころであるともいえます。
ホムンクルスとは一体何なのか?【原作およびフルメタルアルケミスト】
ホムンクルスとは賢者の石によって生成された人型の怪物です。
それぞれ
- 傲慢
- 強欲
- 暴食
- 色欲
- 怠惰
- 嫉妬
- 憤怒
をつかさどっており、これは彼らの生みの親である「お父様」が完全な存在になるために切り離した感情であると作中では明記されています。
寿命はとてつもなく長く、人間の数十倍は長生きできるとされており、一部の例外を除き姿かたちが全く変わりません。
賢者の石とは何?
賢者の石は活きた人間を材料に作られるものです。
生身の人間の周りに特殊な錬成陣を描きそこに生き血を垂らすことで、錬成が完了します。
錬成陣の大きさはまちまちで、部屋一つ分ぐらいの大きさから国そのものを覆うぐらいの錬成陣を描き、国家全員を賢者の石に変えることも可能です。
錬成陣させ完成してしまえば、国ごと亡ぼすことが出来る悪魔的な錬成であると言えるでしょう。
過去にはクセルクセスという国家を丸ごと錬成しました。それによって生まれたのがお父様です。
賢者の石の力
等価交換の法則を無視してあらゆるものを錬成することが出来ます。
基本的に錬金術では無から有は作れないのですが、賢者の石があればそれは可能になります。
熟練の錬金術師が扱えば傷なんて一発で完治しますし、物質量を無視した錬成を行うことが出来ます。
例えば100円玉があったとして、その100円玉を10枚にすることも可能です。
これ自体ありえないことである、とされているのですが、作中では
ありえないことなんてありえない
とたびたび明言されており、賢者の石もこの鋼の錬金術師の世界の中では、一つの現象として存在するわけです。
飴玉サイズの賢者の石がはめ込まれた指輪をするだけでも破格の威力を誇ります。
仮にそれが人間サイズとなればどれだけ恐ろしいかは想像に難くありません。
そう考えれば、ホムンクルスが持っている超人的な能力はなんとなく説明がつくのではないかと思いますね。
具体的にホムンクルスの能力について掘り下げて書いていきたいと思います。
1.憤怒のラース
憤怒をつかさどるホムンクルスです。
ホムンクルスの中では最も新参であるとされていますが、その見た目はダンディであり老練さを感じさせます。
表向きはキング・ブラッドレイと名乗り、アメストリスの大統領を務めます。圧倒的なカリスマ性と聡明さによって国を完璧にまとめ上げ、国民からの支持も熱いと言えます。
また、ただ有能であるだけでなく戦闘能力も無双状態であり、戦車であろうとホムンクルスが相手であろうと全く歯が立たないものとなっています。
言葉による説得力もありますが、キングブラッドレイの場合は背中で語る雄弁さも多く人間がついていきたいと思わせるものがあるのだと言えます。
最強の眼
強さの要因としてまず挙げられるのは
「最強の眼」
でしょう。
圧倒的な動体視力と視野の広さを誇るこの眼は敵のあらゆるスキを見逃さず、空を舞うガラス破片さえ、かすることなく潜り抜けることが可能です。
もっともこの眼がこれほどまでの力を発揮できるのはラースの身体能力と頭脳があってこそだともいえます。
トップになるべく作られた存在。
憤怒のラースは計画によってトップになるべく作られた存在であり、物心がついたころから帝王学や武術の心得を身に着けていきました。
そういった中、賢者の石を注入され、無事耐えきり憤怒のラースとしてホムンクルスの一員になったのです。
他のホムンクルスと違い肉体的に年を取るのですが、それをまったく感じさせないほどの力量を誇ります。
作中では全盛期を描写されることがなかったのですが、間違いなく手が付けられないほどの怪物だったと言えます。
2.傲慢のプライド
最古のにして最強のホムンクルスとされています。
能力は
「影」
であり、影が出来る場所であれば自身の体を影に同化させることが出来ます。
影は自由自在に動かすことが出来、攻防一体の武器として活用し戦い、ある時は鉄をも貫く槍となりある時は敵を拘束する縄になります。
加えて実体のない影に攻撃は通用せず、正攻法で倒すことは非常に厳しいと言えます。
そこに影がある限りプライドは無敵であり、作中でも
「あんな化けもんには勝ち目がない」
と語られるシーンがありました。
作中におけるプライド
キングブラッドレイの養子のセリムブラッドレイとして、作中序盤はかわいらしい男の子としてふるまっていました。
しかし、エドやマスタングがホムンクルスを撃破するにつれて、核心に迫っていき、その正体が徐々に明るみになっていきます。
作中中盤にて、男の子であるセリムブラッドレイは「ただの容れ物」でしかないことが明らかになります。
3.嫉妬のエンヴィー
見た目はかわいらしい男の子ですが、ホムンクルスの中で最も残虐な性格をしているのがこのエンヴィーです。
人間という存在を絶対的に見下していることが描写されており、
「このエンヴィーが人間ごときに」
という言葉をことあるごとに口にします。ホムンクルスは人間を劣等種だと思い込んでいるフシがありますが、エンヴィーは特にその傾向が強いようです。
内面的な部分も怪物ですが、能力もまた人間とは隔絶したものとなっており、自身の姿かたちを自在に変えることが出来、敵陣営のかく乱を得意とします。
イシュバールの内乱の口火を切ったのは変装したエンヴィーであり、またヒューズ中将の命を奪ったのもこのエンヴィーです。
エンヴィーの真の姿
実際の体の質量はその小柄な体躯に見合わないものとなっています。
まさしく怪物と呼べるその見た目は、その昔クセルクセスで錬成され犠牲になった人間の集合体です。
他のホムンクルスもクセルクセス人の肉体を使って作られているのですが、エンヴィーの場合はそれがより顕著で、犠牲になった人間が体表に蠢ているようです。
ただ、実際のエンヴィーは寄生虫のような見た目をしており、非情に弱弱しい存在として描かれています。
4.色欲のラスト
非常に魅力的な女性の見た目をしており、色欲を振りまくような仕草はホムンクルスの紅一点として言っていいでしょう。
か弱い女性の見た目をしていながら、戦闘能力は非常に高く仲間内では
「最強の矛」
と呼ばれています。
その戦闘力に加えて機転も利き、後先のことを考えて行動する力に長けています。裏で物事を動かす参謀というよりも、現場で力を発揮する実行部隊に値すると言えます。
最強の矛
ラストの扱う爪は伸縮自在であり、振り回せば鉄を切り裂く剣になり、突き刺せば万物を貫く槍になります。
自身の再生能力をあいまって同士うちならば確実にラストが勝つようになっており、非情に厄介です。
ラストを倒すためには、遠距離から瞬殺できる攻撃手段が必須であり、そういった意味ではロイマスタング以外のキャラクターでなければ倒せなかったと言えるでしょう。
5.強欲のグリード
強欲をつかさどるホムンクルスであり、とにかくあらゆるものを欲します。
その中でも自由に対しては大きなこだわりを持っており、支配されることを嫌ってホムンクルス一派から抜け出しました。
ということで、ホムンクルス陣営からすればかなりの問題児であると言えます。
最強の盾
能力としては体表面の構成式を変えることで体一帯をダイヤモンドのように硬くすることが出来ます。ラストが最強の矛ならばグリードは
「最強の盾」
です。
盾、とはいえ拳を炭素で覆えばそれは「最強の硬さを持った拳」になりますし、爪で切り裂けば最強の硬度の爪になります。
圧倒的な強さを持つわけではありませんが、汎用性の高い能力と言えます。
6.暴食のグラトニー
ホムンクルスの中では知能が低いグラトニーですが、能力は非常に強力であり、体内に疑似的な真理の扉を持っています。
あらゆるものを空腹に任せて、喰らい、そこに飲み込まれたものは特殊な方法を用いない限りは一生出ることが出来ません。例え同族のホムンクルスであっても同じことです。
知能が低いわりに本人も制御できない能力を持ち、ホムンクルス陣営においても、扱いにくいのが玉に瑕であると言えます。
そのため、行動をする時は機転が利くラストとともにしていることが多いです。そのため捕食しようとする際は
「食べて良い?」
と問いかけることが作中でいくつも見られました。
ラストが殺されたときは、実の姉が殺されたように怒り狂い、冷酷なホムンクルスの中でもとりわけ仲間思いだったことが分かります。
7.怠惰のスロウス
怠惰のスロウス。作中ではあまり目立った活躍はしていなかったですが、実際は国土全てを覆う穴を馬車馬のように愚直に掘り続けていました。
その穴の正体は巨大な錬成陣であり、スロウスがいなければホムンクルスの計画は成しえなかったと言っても差し支えないと言えます。
しかし、当のスロウスは
「めんどくせえ」
といいながら、穴を掘るだけであり自分が行っている仕事の重要性を自覚していない様子でした。
ただ、そういった性格だったからこそ、考える事さえも放棄して惰性で仕事をこなせるスロウスに仕事が任されたのかもしれません。
スロウスの真の実力
怠惰のスロウスという名前からは想像できないぐらいに速いです。まさしく目にもとまらぬ速さであり
「最速のホムンクルス」
とされています。
しかし、ラースやエンヴィーのようにその実力を制御する術がなく、力を持て余している描写がありました。
ただそれでも、錬金術師が複数集まってようやく対処できるほどの怪物であり、強靭な肉体と圧倒的なスピードで突進する攻撃は
「単純すぎる故に攻略が難しい」
と言えるでしょう。
攻略するには生物的に活動できない極寒の地に放り出しておくか、進行方向を予測してそこに大きな突起物を設置して自滅を誘うか。などが有効になります。
最悪で最高の悪役であるホムンクルス
ということで、ホムンクルスについてまとめてみました。
いかがでしたでしょうか。
たったの数人で人類に立ち向かったホムンクルス。
圧倒的な少数精鋭で、人知を超えた能力と知性をもってして超越した存在として作中では描かれていました。
しかし、ホムンクルスも元をたどれば、人間であり時折見せる人間的な弱さもこの作品における見どころではないかと思います。
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